我々のこだわり 全量生酛造り

初孫は普通酒から純米大吟醸まですべてのお酒を生酛造りという製法で仕込んでいる、日本でもかなり珍しい全量生酛造りの酒蔵になります。

日本には2025年現在、1,100件ほどの酒蔵が存在していますが、そのうちすべてを生酛で造っている酒蔵は1%未満(10件以下)といわれております。
(一部の商品を生酛で仕込んでいる酒蔵はもっと多くなります。)
その中でも本醸造から純米大吟醸、スパークリングまで幅広いラインナップを生酛で仕込んでいるのは全国広しといえども我々だけではないでしょうか?

1.日本酒造りの基本

日本酒は、米・米麹・水を主な原料として造られる醸造酒である。最大の特徴は、米のでんぷんを糖に変える「糖化」と、その糖をアルコールに変える「発酵」が同時に進行する並行複発酵という仕組みを用いている点である。この複雑な発酵を成立させるため、日本酒造りは多くの工程に分かれ、原料処理から瓶詰・出荷まで厳密な管理のもとで進められる。

2.原料処理工程

精米

酒造りは精米から始まる。玄米の外側には、たんぱく質や脂質など雑味の原因となる成分が多く含まれているため、これを削り落とす。削った後の白米の割合を「精米歩合」と呼び、数値が小さいほど淡麗で雑味の少ない酒になりやすい。
精米後の白米は、すぐには使用せず、一定期間置いて水分を均一化する「枯らし」を行う。

洗米・浸漬

白米を洗って糠を取り除いた後、水に浸して必要な水分を吸収させる。この吸水量は蒸米の仕上がりに大きく影響するため、特に高精白米では秒単位で管理される。

蒸米

浸漬後の米は蒸される。蒸すことででんぷんが酵素で分解しやすい状態になり、同時に雑菌も殺菌される。麹用の米と仕込み用の米では、目的に応じて蒸し具合を変える。

3.製麹(せいぎく)工程

蒸した米の一部は麹に加工される。麹とは、蒸米に麹菌を繁殖させたもので、でんぷんを糖に分解する酵素や、たんぱく質をアミノ酸に分解する酵素を大量に含んでいる。
製麹は麹室と呼ばれる高温多湿の部屋で、約2日かけて行われる。蒸米に麹菌をふりかけ、切り返しや盛りなどの作業を通じて温度や菌の増殖を調整する。麹の出来は日本酒の甘味、旨味、香りを左右するため、酒造りの中でも特に重要な工程である。

4.酒母(しゅぼ)造り

酒母は、発酵の主役である酵母を健全に大量培養するための工程である。蒸米、麹、水、酵母を用い、酵母が雑菌に負けずに増殖できる環境を整える。
酒母には、乳酸を添加して短期間で仕上げる「速醸酒母」や、自然の乳酸菌を利用する「生酛系酒母」などがある。酒母の出来は発酵の安定性や酒の味の骨格に影響する。

5.もろみ(本仕込み)

完成した酒母に、蒸米・麹・水を加えてもろみを仕込む。この際、日本酒では「三段仕込み」と呼ばれる方法が用いられる。初添、仲添、留添の三回に分けて原料を投入することで、酵母の急激な負担を避け、安定した発酵を促す。
もろみ期間中は、麹の酵素がでんぷんを糖に変え、酵母がその糖をアルコールに変える並行複発酵が進行する。温度や成分を日々管理しながら、約20~30日かけて発酵させる。

6.上槽(じょうそう)

発酵が終わったもろみは、上槽と呼ばれる工程で液体の酒と固形の酒粕に分けられる。搾り方には、袋吊り、槽搾り、機械圧搾などがあり、酒質や生産量に応じて使い分けられる。

7.仕上げ・出荷工程

搾った酒は、しばらく静置してオリを沈殿させた後、必要に応じて濾過される。その後、多くの場合は品質安定のために火入れと呼ばれる低温殺菌を行う。
火入れ後の酒は貯蔵・熟成され、味わいが整えられる。最終的に水を加えてアルコール度数を調整し、瓶詰・再火入れを経て出荷される。

8.まとめ

日本酒造りは、原料処理、麹造り、酒母育成、発酵管理、仕上げまで、多くの工程が緻密につながった醸造プロセスである。各工程の判断と管理の積み重ねが、酒蔵ごとの個性や味わいとして表現される。日本酒は、単なる製造品ではなく、微生物と人の技術が共同で育て上げる酒であると言える。

生酛造りとは

日本酒を発酵させるためには、酵母(こうぼ)というアルコール発酵を司る微生物が大量に必要です。
しかし日本酒を造る酵母は弱く、普通の状態の米や水の中では、他のバクテリアなどの雑菌に負けてしまいます。
一言で言うと、乳酸の酸性環境で、酵母を雑菌から守りながら増殖させる。これが 酒母(酛/もと) です。
その酒母の乳酸環境の作り方が、生酛造り と 速醸の大きな違いです。

① 仕込温度は生酛が低く、速醸は酵母の増殖に勢いが必要なので仕込温度は高い。
② 生酛の最初は中性から始まり、速醸は酸性から始まる。
③ 生酛は酵母が添加されるまえに雑菌が淘汰される(無菌状態)が、速醸は野生酵母などいろんな菌が混在しているので酵母純度は生酛の方が高い。

生酛造りと速醸の作り方イメージは下記をご覧ください。

生酛速醸
酒母ができるまでの期間1か月程度2週間程度
乳酸環境の作り方天然の乳酸菌を育て、乳酸濃度が十分高まったところで酵母を加える。最初に乳酸を人工的に添加する。

ではなぜ手間と時間がかかる生酛造りにこだわるのか?
それは酒の品質と個性を追求するからにほかなりません。

よく、生酛のお酒は複雑かつ深い味わいになると言われていますが、その通りで、
乳酸菌が育つ仮定でも実は様々な菌が育っては移り変わり、その過程で多様な香り成分や旨味成分が生まれるため、深い味わいが作られます。

それ以外にもあまり知られていない下記のような特徴とメリットがあります。

特徴➀ 速醸に対して酵母のアルコール耐性が高い

→酵母は糖分をアルコールに変換する酒造り工程の主役になりますが、“菌”ですのでアルコール濃度が高まり一般的には15%を超えてくるあたりから死滅する割合が多くなります。一方で、生酛で育まれた酵母はより高濃度まで耐えることができます。

メリット➀ 酵母死骸起因の雑味が少ない

仕込み後半はアルコール濃度が高くなり、酵母にとって厳しい環境になります。酵母が自分で生成したアルコールで死滅すると、酵母の死骸が雑味成分になります。
しかし酵母純度が高い生酛で育った酵母はアルコール耐性が高いため、速醸より雑味発生比率が少なく、後味のキレイな酒になりやすいです。

特徴② 速醸に対して酵母の低温活動性が高い

→一般的に低温で仕込むほうが雑味を抑えられるとされていますが、低温になると酵母の活動も弱まってしまいます。しかし、生酛で育った酵母は3℃でも元気に活動できます。

メリット② 雑味の少ない辛口の酒が得意

生酛で育まれた酵母は低温かつ高ALC濃度でも生酛酵母が活動しますので、低温で長期間仕込みを引っ張れます。すると、糖分からALCへの変換率が高まり、(これを完全発酵と呼ぶ酒蔵もある)雑味の少ないかつ味わいのある辛口酒を造ることができます。
これが、当社代表商品“魔斬”が唯一無二の味わいの秘訣です。

特徴③ 速醸に対して酵母の耐酸化性が高い

メリット③ 経験的に品質が長続きする。

これら特徴とメリットが酒の品質に与える影響、個性に与える影響は非常に大きく、従って我々はこれまでもこれからも“生酛造り”にこだわってまいります。